国家行政論

『近代国家の成立と発展について述べよ。』

1 はじめに
 政治の構造については、内外ともに激動の波にあらわれた。国際的には、東ドイツの統一、東欧の民主化ソ連邦の解体、EUの発足などがあり、さらには局地的な紛争が引き続き発生した。
 一方、国内的には、自民党一党支配の終焉、連立内閣の成立、政党の再編成、選挙制度の改正などを経験してきた。
行政国家とは、政府が社会の秩序維持にとどまらず、一定の理念の実現を目指して国民の生活、経済活動の在り方に積極的に介入しようとする国家をいう。立法国家、消極国家、夜警国家と対比される。
また、バブル経済が破綻し経済の建て直しのために政治の力量が問われもしてきた。こうした変転する現代の政治社会に対応すべく、近代市民社会から大衆社会への変化において、国家の機能が如何に変遷してきたかを考察し、近代国家の成立と発展について述べたい。

2 近代市民社会
 近代市民社会は、シェイエスが『第三身分とは何か』の中で、従来政治的地位がゼロであったと指摘する第三身分すなわち」市民によって構成される社会である。市民社会は経済的には資本主義に立脚し、自由競争もしくは自由放任主義的な経済活動、および自由主義的な基本権が市民に保障された社会である。
近代国家の担い手は第三身分としての市民であり、市民の代表者が構成する議会は教養と財産とを有する名望家の議会であった。そこでは教養と財産とをもたない市民以外の国民大衆による政治参加はまだ実現されなかった。
 市民社会と立法国家との関係の具体的については、
変化は速度を増している。そのため、民主主義国の政府は皆、政策決定への市民関与を効果的にするための法律、政策、制度、手段を常に修正・更新しなければならなくなっている。政府の透明性、説明責任、開放性を高めよという国の内外からの圧力に応えるには、国家間でそれぞれの経験を分かち合うことが画期的な解決法のヒントを与えてくれる貴重な源泉となる。リュブリャナで開かれた「南東ヨーロッパに開かれた政府を構築するための国際円卓会議」でも示されたように、共通の重要課題について政府と市民社会が政策対話を行うことは大変有意義なことである。
このような形式での対話や意見交換は今後、OECD 加盟国と非加盟国との間で、また、政府と市民社会活動家との間で、ますます重要になってくると思われる。それは、我々の社会が現在、次に述べるような課題を数多く抱えているからである。
グローバル化:政策決定や市民参加に対して影響はあるか。
・ 時間:素早い意思決定が必要な中、議論に十分な時間が確保できるか。
・ 市民:権利と義務について新たなバランスが生まれつつあるのか。どのような技術が必
要となるか。
・ 市民の自由と国家安全保障:どうやってバランスを取るのか。
・ e-デモクラシー:議会制民主主義の枠組みの中で国民の議論を拡充するのか、それとも、
世論調査の継続状態」という新たな時代の幕開けとなるのか。

3 大衆社会
 第三身分、つまり同質的市民から構成されていた従来の近代市民社会はこうして崩壊し、資本家と労働者との対立に見られるような異質的な階級分化の社会が誕生するのである。このような資本主義の進展に伴う流動的な経済状況を背景として新たに登場してきたのが「大衆」である。この大衆は、持続的な結合関係をもたず、非合理的で感情的な影響力に身をさらしながら暗示によって左右される群衆心理をもつところの未組織の集団である。この「大衆」が新たしい社会の担い手となっていくのである。
 大衆社会と行政国家との関係の具体的については、
自由民主義体制の政治を論究した5つの国家論、 すなわち多元主義、 ニュー・ライト、 エリート主義理論、 ネオ・マルクス主義、 ネオ・多元主義の各潮流の現代政治理論について、 それらが各々国家と社会との関係をどのようにアプローチし、 論究しているのかを比較検討し、 1920年代においてイギリスとドイツとの自由民主義体制が辿った対照的な政治過程を検証し、 先進資本主義国家の政治力学の多様な態様を比較検討する。 その際、 国家、 とりわけ政府の政策決定過程における政治的アフターの政党、 官僚、 利益集団、 マス・メディア、 社会運動の織りなす政治的協調と対立の力学に焦点をあて、 戦後日本の政治過程をも視野に入れて考察する。
先進国は多かれ少なかれ行政国家となり、 その大部分は 「悪魔の政治学者」 C・シュミットの言うところの 「量的全体国家」、 換言するなら 「協調主義国家」 の特徴を示している。 この特徴は政策決定レベルに顕著にみられる先進国の政治生活の特色であるが、 他方、 大衆民主主義の進展によって 「底辺民主主義」 の動きもこの20年間ますます強まっている。 それは環境保護、 一切の差別撤廃を目指す平等などの価値を強調する傾向を示し、 参加民主主義や新社会運動の台頭とあいまってこれまでの行政国家化に伴う中央集権主義を批判し、 個人やコミュニティの個性や自由な発展を保障する新しい政治システムの組み直しを要求している。 要言するなら、 それは分権化、 連邦化等の動きとなって現象し、 この200年間、 ポジティヴにみられてきた国民国家、 そして中央集権的な単一国家のあり方に疑問を投げかけた。 こうした先進国の政治生活の頂点と底辺においてみられる二つの相反する傾向が織り成す政治力学を理論的に解明し、 その将来への展望を試みたいと思う。

4 国家の機能
 国家は社会とその成員である国民を「統治(govern)」することが主たる機能であり、その機能は一般に「政府(government)」がになうものである。
 社会の秩序と安定を維持するという国家の機能は、一国単位で見れば国内の統治機能あるいは国内政治ということができる。

5 資本主義社会の発展
 初期資本主義に基礎を置く近代市民社会は、19世紀末から20世紀初めにかけて大衆社会へと推移する。その変化については近代市民社会の形成に見られるような市民革命などの明解な分岐点はないが、その背景には経済的・社会的および政治的要因があるように思われ、それらが大衆社会の特徴にもなっている。

6 おわりに
 近代市民社会から大衆社会への変化において、国家の機能が如何に変遷したかにおいては、近代デモクラシーは合理的な、理性的な公衆による自発的選択によって政治的秩序が再生産される。という理念で基礎づけられていた。政治の世論が大きな変化をもたらしているように考える。如何にして、国家がどう機能するかによって、大きく変化していくことが考えられる。

1 参考文献
(1) 関根二三夫・岩井奉信・黒川貢三郎・杉山逸男・外山公美・松木修二郎著『教養政治学』南窓社 2005年3月31日 p85-93
(2) 関根二三夫・泉淳・小川原正道・櫛田久代・倉島隆・田村充代・渡辺孝著『問題発見の政治学八千代出版 2004年4月15日 p64-67.p221-222