『環境公共政策論』研究リポート


1 はじめに
 第5章「環境保全と費用負担原理」をとりあげ、費用負担原理のあり方を効率性、公平性、環境保全への効果といった観点から評価する。
環境政策の実施には様々な費用がかかる。それを「環境保全費用」と呼ぶ。この環境保全費用は誰かが何らかの形で負担しなければならない費用だが、それを誰がどのように負担すべきなのか、その配分のルールが定められねばならない。これを「費用負担原理」と呼ぶ。
具体的な課題、問題を、対策と今後の取り組み、その環境問題・環境政策の背景や発生理由、政策の正当性について論ずる。

5.1 問題の所在―これまでの研究とその到達点
5.1.1 環境保全に関わる費用とは何か
 1960年代から70年代の高度成長期に、甚大な公害被害を経験した日本では、公害による社会的費用とは何か。それを誰にどう負担させるのが公平なのかが一大テーマとなった。したがって本章では何よりもまず、これまでの議論の中で何が解明され、何が未解決なのかを整理することから始めたい。
第1に問題となるには、そもそも環境保全に関わる費用とは何かという問題である。

5.1.2 環境保全費用と社会損失・社会的費用
(1) 社会的費用概念とその計測
 環境保全費用が、以上のような広がりを持つ包括的な費用概念であるとしても、それはいわゆる社会的費用と同一な概念だと考えてよいであろうか。答えは否である。本章は社会的費用について詳細に論ずる場ではないので、ここでは、簡潔に「環境保全費用」と「社会的損失」、「社会的費用」といった概念との関係に絞って論ずることにしよう。
(2) 環境保全費用と社会的費用の関係
 さて、いかなる方法で計測するかという問題はあるが、これらいずれかの方法によって環境悪化がもたらす社会的費用が定量的に評価されたという。環境政策論では、これらの費用は内部化されるべきだとか、PPPに従って原因者が負担すべきである、と主張されてきた。しかし、社会的費用は原因者に何らかの費用を負担させる際の理論的根拠にはなるが、それがそのまま原因者に何らかの費用を負担させるべき費用と一致するわけではない。

5.2 費用負担原理
5.2.1 原因者負担原則と拡大生産者責任
 環境保全費用の規模が決定されると、次に問題となるには、それを誰がどれだけ負担するのかという点である。そこで、費用負担のあり方を決めるルール、つまり費用負担原理が問題である。

5.2.2 受益者負担原則と納税者共同負担原則
 「受益者負担原則」は、原因者負担原則とは対照的な費用負担原理である。これは、汚染原因者ではなく、環境対策を実施することによって便益を受ける主体がその費用を負担すべきという考え方である。このような考え方の適用事例の典型は、農業環境政策の領域にみることができる。

5.2.3 潜在的責任当事者負担原則と拡大原因者負担原則
 第4の費用負担原則は、アメリカのスーパーファンド法で採用されている費用負担制度を念頭に置いた「潜在的責任当事者負担原則」および「拡大原因者負担原則」である。

5.3 社会的共通資本と費用負担原理
5.3.1 環境保全費用の規模の決定
 まず事前的な環境保全費用のうち、事前的な未
然防止費用をいかに配分すべきかについて検討しよう。未然防止費用は、環境悪化を未然防止するための環境政策と密接な関係を持っている。環境政策の内容が未然防止費用の規模を決定するといってよい。

5.3.2 公的負担と私的負担の関係
(1) 共同処理とその費用負担原理ー下水道の費用負担システム、(2)共同処理から発生源での処理へー廃棄物・リサイクル政策と費用負担
以下は、寺西俊一・石弘光編集『環境保全と公共政策 岩波講座 環境経済・政策学(第4巻)』岩波書店 2004年2月16日 図1DSDの費用負担の仕組み p139. 図2 容器包装リサイクル法の仕組み p141.参照。古林英一著『環境経済論』日本経済評論社 2005年1月31日 p217.参照。


図1はDSDの仕組みを示している。DSDに参加する生産者は、その商品の包装がDSDによってリサクルされていることを示す「緑のマーク」を商品に添付することが許可される。


5.4 事後的な環境保全費用の負担原理
 次に、事後的な環境保全費用とその費用負担原理について検討しょう。その上で、事後的な環境保全費用に関する負担制度の制度設計上、何がもっとも問題となるのかをみていくことにしよう。

5.5 環境保全費用の負担原理の評価
以上、社会的共通資本を維持管理するための環境保全費用をいかに調達し、はいぶんしていくべきかについて検討してきた。結論として重要ことは、できる限り原因者負担原則、あるいは拡大生産者責任に忠実に費用負担システムを構築すべきだという点である。

 第1に、何らかの正当性が存在する場合を除いて、公的負担の比率を必要以上に高めるべきではない、原因身分の負担を軽減することは、産業政策上必要かもしれないが、公平性を満たさず、その費用負担システムの持つ政策効果を低下させる。長期的には、環境保全に関する技術革新を阻害することにもつながるであろう。さらに、公的負担率の高い処理技術がつねに選択されてしまうことによって、最適な処理技術の選択をあやまることになる。この結果、社会全体として処理費用はつねに膨張しがちになる点で効果的でない。

 第2に、原因者が負担すべき総費用を各排出者に配分する際には、個々の排出者が総経費にどれだけ寄与したのかをできる限り正確に反映するような指標をつくり、それに基づいて総費用の配分を行うのが望ましい。


 しかし第3に、事後的な環境保全費用の負担システムを構築する際には、原因者負担原則を上述のような意味で徹底できない場合がある。
 いまは、資源に乏しいわが国が持続可能な発展を実現していくために必要不可欠な課題、環境にしてもなにかにつけて、コストいくらかかるかの経済面にも考慮し、明らかにしていかないと、利用は望めないと考える。

最後に、これからの環境政策の課題と展望を考えていくうえでは、いわゆる「公共性」ないし「公的利益」とはそもそも何か、という問題についての現代的な視点からの再検討、および、その担い手に関する新たな視点からの検討が求められているということである。こうした点では、今後、市場セクターを担う企業の新たな使命や役割とともに、自立的な市民の協働セクターを担うとしてのNGOや非営利セクターとしてのNPOなどがはたすべき意義と役割もますます大きなものとなっていくであろう。
 これからの「環境政策」には、従来までの狭義の「環境政策」の領域ないし分野のみでなく、他の領域ないし分野、とりわけ従来までは、「経済政策」の領域とされてきた諸分野にまでおも踏み込んでいくことが新たに要請されている。

6 課題と今後の取組み例
 例えば地球温暖化防止や廃棄物・リサイクル対策といった分野において、先進的な環境技術を具体的に開発、普及したり、これらの環境対策が組み込まれたまちづくりを進め、それを中心に具体的に地域全体の活性化を図っていく必要がある。
また、例えば、優れた自然景観や温泉等の観光資源が集中している国立公園等の地域については、保護と利用に関する各種施策を積極的に活用し、観光資源を地域活性化に結びつけていくことが有効である。

現代の日本における基幹的な交通システムは、自動車交通によるものである。大都市市街地や長距離区間の旅客輸送では鉄道や地下鉄、航空機が担う部分があるが、高速道路が整備され、舗装道路が津々浦々まで延伸した状況にあって、陸上部では貨物、旅客とも自動車交通が主役と言って過言ではない。平成12年度の輸送機関別分担率では、貨物輸送量の約90%、旅客輸送の約74%が自動車によるものとなっており、平成2年度の同分担率に比べると特に旅客輸送の自動車割合が増加している。

これは、戦後一貫して自動車の保有台数が増え続けていることにもよる。自動車による移動は、出発地と目的地の間のルート選択に自由度があり、路線バスなど以外は出発時間を任意に決めることができるという便利さも、他の輸送手段と大きく性格と異にしている点である。運転免許証の保有者数も、自動車保有台数の伸びとほぼ同じ傾向で増え続けている。
しかし一方で自動車交通の増加は、次のような様々な問題を都市や環境、地域社会に投げかけている。

・交通事故の増加
排気ガスの排出による大気汚染
・交通弱者に対する危険性の拡大
・交通渋滞の発生
・都市整備における制約

 これらは、行政による道路設計の改善や道路整備の充実だけでは解決しにくい問題である。地域住民が、人と自動車との共存を可能にする都市構造を積極的に考え、まちづくりの中で生かしていくとともに、自家用車の使用に頼る自らの生活スタイルを見直し、公共交通機関や自転車などのほかの交通手段をできるだけ利用するなどが必要とされる。

経済と環境の関係については、「経済成長か環境保全か」「開発か環境か」というジレンマとして捉えるのではなく、これまでの生産と消費のパターンを見直し、持続可能で環境負荷の少ない経済発展を目指すという視点で捉えることが重要である。「持続可能な開発」は、現代の環境問題を考える上での基本となるキーワードで、「環境と開発は切り離すことのできない関係にある。開発は環境や資源というベースの上に成り立つものであって、持続的な社会の形成のためには、環境の保全が必要不可欠である」という考え方といえる。

 環境と調和した生活の促進のため、民間団体による先駆的かつ効果的な実践活動等をモデル的に支援する例として、マイバックを持参する、過剰包装を避ける、詰め替え商品を選ぶなど日常の買い物におけるごみの減量化や省資源化を進めるため、平成17年10月に消費者に対して環境に優しい買い物の実践を呼びかけるキャンペーンを、コンビニエンストア、スーパー、生活協同組合、百貨店、商店街等の協力を得ながら取組み例。

 また、関係4省庁(警察庁経済産業省国土交通省及び環境省)による「エコドライブ普及連絡会」において、駐停車時のアイドリングストップをはじめとする環境に配慮した自動車の使用(エコドライブ)の普及推進策として、やさしい発進の取組み例。

環境の学習を進めていくと、学習者は、自分たちの住むまちの環境問題の存在に気づき、その原因が自分たちの生活にあることに容易に気づくことができる。しかし、問題の大きさに自分たちの未来を悲観的にとらえたり、自分ではどうすることもできないという無力感を感じ、行動に結びつきにくい側面が生じることがある。

全国各地で、住民によるまちづくりの活動が広がっている。まちづくりの内容は、環境、福祉、景観、防災、交通、教育文化など多方面にわたる。住民によるまちづくりは、行政だけに任せずに、住民にとって暮らしやすい、よりよい地域を自分たちの手で創っていこうとするものである。
また、まちづくりの実践をとおして住民が身に付けることができるものは多く、問題解決に向けての企画・立案力、異なる意見の調整力、実行力や活動の推進力、課題の発見能力、意思伝達能力、他者の意見を理解する能力などのほか、調査能力や表現力などがあげられる。これは自主的にまちづくりに参画するなかで自然に培われるものである。

環境学習の目標は、長期的視点や社会的公正さを備えた持続可能な社会づくりに参画できる人づくりにある。地域を舞台に、よりよい地域を創っていくまちづくりと環境学習との連携が求められる。持続可能な地域社会を実現していくことが、地球規模の持続可能性を実現する道筋をひらくことになる。
地域固有の山並みや川、海といった自然や地勢を骨格として、そのうえに建築物、農地、道路といったさまざまな人工物や営みが積み重なり、それらが集合して景観は成り立っている。景観はその地域の自然、風土、歴史、文化、産業、生活などを映し出し、私たちは景観からその地域における人間による環境への働きかけ、人間と環境とのかかわりや文化を推察することができる。その意味で、景観は環境問題の入り口に立つ番人であり、見張り役と言う人もいる。

人々の感じる美は多様であり、美しい景観とは何かということに関する合意も難しいかもしれない。しかし、多くの人が美しいと感じる都市や町は現実に存在する。美しい景観はそこに住む人々の生活のありようを反映したものである。地域がめざしている将来像、そこに住む人や事業所の価値観やふるまいの作法が問われているといえる。

 (1)欧州における取組
成熟社会を迎えた欧州では、いち早く持続可能な都市(サスティナブル・シティ)の実現に向けた取組が進められており、これらは、大きく次の3
つの政策に分類することができます(表2-2-1)。

ア 土地利用と交通計画による環境と福祉の統合
社会福祉先進国であるデンマークの首都コペンハーゲン市では、ノーマライゼーションの考えに基づき、また、家族が住みやすいまちづくりやヨーロッパの環境首都を目標にした取組を進めています。具体的には、5本の近郊電車(Sバーン)を5本の指に見立て、このSバーン沿いに市街地を展開しており、それ以外の地域では土地利用の規制を強めつつ、大規模な緑地を確保し、コンパクト化による地域熱供給システムの導入を図るフィンガープランと呼ばれる施策を実施しています。また、バス交通網の充実やバスと鉄道の乗り継ぎ利便性の向上、中心部への自動車の流入規制や駐車場の削減、自転車道ネットワークの整備などの交通政策を段階的に進めています。このような取組の結果、市街地に隣接して大規模な緑地空間が保全されることとなり、環境への効果のみならず、市民の憩いの場としても機能しています。また、現在、通勤時には市民の約30%が自転車を利用するようになるなど成果を上げています。

イ 市街地の自動車抑制による持続可能な交通システムの実現
また、ノルウェーの首都オスロ市は、環境政策として、交通渋滞の緩和、公共交通機関の拡張などの取組を行っているほか、交通部門における環境負荷の低減を目的に、市中心部に設置されたゲート(トールリング)を通過するすべての車両に通行税を課し、そこで得た資金を活用して地下幹線道路の建設やその他交通システムの改善を行っています。このような取組を通じて、市中心部の地上道路で交通量を減少させることに成功し、この結果、スムーズな交通が確保され、交通事故が減少したほか、大気汚染や騒音問題も改善されました。

欧州ではこのようなサステナブル・シティの取組に対する「持続可能な都市大賞」という表彰制度があり、上記2都市もその受賞都市です。このように、EU加盟国内において持続可能な都市についての知見や経験が共有され、また、蓄積される仕組みが作られています。

(2)米国における取組
米国では、現在も人口増加が続いていますが、そのスピードを上回って郊外における住宅開発や自動車交通が拡大しており、このような郊外化によって野生生物の減少などの自然環境や大気汚染、水質汚濁、地球温暖化、騒音といった環境問題、中心市街地の衰退、市街地の犯罪増加などを招き、それがさらなる郊外化を引き起こすという悪循環が見られます。
一方で、交通混雑や大気汚染の解決するために行われた道路整備が誘発交通を生み、自動車利用の拡大を招くなど、政策自身がスプロールを助長することにもなりました。また、郊外化を抑制するために行われる土地開発規制では、きめ細やかな対応が難しいことから、適切な土地利用を促進する取組が求められるようになりました。
このため、歩いていける範囲に商業、居住、オフィス、娯楽、公共サービスなど様々な施設や公園、広場、緑地などのオープンスペースが配置された、多機能なコミュニティ空間を形成することや、貴重な自然環境を最大限に保全しつつ、エネルギー消費を最小限に抑える環境に配慮した社会システムの構築を目指し、新規開発を一定の区域に誘導することや公共交通機関の整備などを行う「スマートグロース(賢明なる成長)」の取組が広がっています。
ア 予算の集中投資による都市開発の誘導
ワシントンDCに隣接するメリーランド州では、2025年には2000年に比べ16%も増加することが予想されるなど人口増加が著しく、田園への住宅進出が進んでいました。そこで、従来の土地利用規制に加え、住みやすい都市環境づくりへの支援や自然資源及び農地の保全を通じ、経済成長と環境保護のバランスの取れた持続可能な開発の促進する「スマートグロースイニシアティブ」を実施しています。
具体的には、州の公共事業等への支出を優先的資金投資エリアに限定することでその区域の利用を促進するスマートグロース区域法に基づき、中心市街地での職場や遊び場としての環境を整え、住みやすいと思えるコミュニティの維持・再生を図っています。また、農地の買い取りによりグリーンベルトを確保する田園遺産保存制度に基づき、都市開発によってだんだんと縮小していく自然資源の適正な管理・保護を行っており、これらの施策によってバランスが取れた地域の発展を目指しています(図2-2-1)。

イ 複数の核への成長の集約と公共交通ネットワーク
ワシントン州シアトル市では、住宅と雇用、ショッピングやレクリエーションなどの住民サービスをアーバンビレッジという特定地域に集中させ、各ビレッジを公共交通機関で結ぶことにより、職住近接なコンパクトなまちづくりを目指した「アーバンビレッジ構想」を実施しています。
アーバンビレッジは、そのエリア内の徒歩圏で生活サービスを充足させ、都市圏域での公共交通利用を促進させることに狙いがあり、商業機能や居住区域などが集まり高い優先度で開発を進める地域(アーバンセンター)を設定するほか、集合住宅地域(居住アーバンビレッジ)や居住地区、重要商業地区が混在する地域(ハブアーバンビレッジ)など、その特性に応じ細かに設定しており、これらの核となる地域を、アーバンビレッジ交通ネットワーク計画に基づき、2030年までに交通網で結ぶことを予定しています(図2-2-2)。

これらの取組の結果、大気汚染や省エネルギーなどの環境保全効果はもちろんのこと、コンパクトな都市構造による公共投資の節約、コミュニティの生活の質の向上、これに伴う経済競争力の高まりなどが期待されています。

(3)わが国の先進的取組
わが国でも、持続可能なまちづくりを進める機運が高まる中、行政やコミュニティなど、さまざまな主体によるまちづくりが始まっています。
ア コンパクトシティの取組
富山県富山市では、「街の顔」となる中心市街地の再生と車に過度に頼らない、歩いて暮らせるまちづくりを目標として、まちなか居住を促進するための公的補助、空き店舗の活用をはじめとする中心市街地の再生事業を行うとともに、高齢者等の交通弱者にもやさしいLRT(Light Rail Transit)と呼ばれる路面電車の導入をはじめとした公共交通機関の充実により、まちの再生・活性化を図っています。このような取組には、中心商店街の活性化のみならず、コンパクトな都市構造による省エネルギーなど、環境負荷を低減する効果が期待されます。

また、富山高岡広域都市圏第3回パーソントリップ調査では、都市圏の将来像の設定に当たり、都市構造と公共交通の利用が現況のまま推移した場合や都市機能の都心部集約と公共交通重視を行った場合といった6つのパターンを想定した検討がなされています。これによれば、都心部に都市機能を集約し公共交通の利用促進を同時に行うパターンが、最も自動車の利用が抑制され、二酸化炭素排出量の削減に効果があると試算されています(図2-2-3)。

イ ひとと環境にやさしい交通まちづくり
大阪府池田市では、エコドライブの推進と駅ボランティア事業の取組により、「ひとと環境にやさしい交通まちづくり」を進めています。エコドライブ推進事業では、運送車両315台に運転状況にあわせて音声でエコドライブを指導するデジタルタコグラフを設置した結果、平成17年度は約1,300トンの二酸化炭素排出量が削減されました。また、駅ボランティア事業では、「心のバリアフリー」を目標に掲げ、高齢者や障害者の移動や荷物の運搬等の支援を行うなど、公共交通機関の利用の促進を図りました。これには、駅改札前のポイ捨てが減少したなどの副次的な効果も見られました。

ウ コミュニティバス
京都市伏見区の醍醐地区は、市営バスの撤退により地区内の移動が不便になったことや、高齢化の進む山沿いの公営団地に、公共交通機関の運行が求められていたことから、「醍醐地域にコミュニティバスを走らせる市民の会」が地元事業者の協力を受けて、コミュニティバスの運行を開始しており、現在は「醍醐地域にコミュニティバスを走らせる市民の会」と名称を変更し、活動を行っています。
このコミュニティバスは、高齢者や子どもたちなど、この地区の住民にとって、日常生活の貴重な足となっているだけでなく、自家用車を利用する場合と比較して二酸化炭素排出量が1人当たり約半分で済むといった環境負荷低減効果が得られています。
http://www16.ocn.ne.jp/~daigobus/index.html
エ 自転車のまちづくり
秋田県二ツ井町では、東京都杉並区でごみとして扱われ処分に苦慮していた放置自転車を再利用することにより、まちを活性化する事業に取り組んでいます。まちの主要な10か所のステーションに合計450台の自転車を設置するほか、町道・県道にあわせて総延長約3キロに自転車歩行車道を整備するなどの自転車のまちづくりを推進しており、地域の若者から高齢者、さらに観光客等にも利用してもらうことで、駅周辺や中心市街地、市内観光スポットなどへの「人」の流入を図り、中心市街地を賑いのある元気な「まちの顔」へと再生を図っています。このような取組の結果、車依存のライフスタイルから、車と自転車・歩行の使い分けへの転換が進んでおり、移動時の二酸化炭素排出の抑制効果が期待されます。
オ 地域冷暖房の取組
光が丘パークタウンは、練馬区板橋区にまたがり、周囲に緑の公園を配し「自然と調和した緑豊かな明るい街」として建設された12,000戸の大規模住宅団地です。この団地と、隣接する住宅、学校、商業施設、官公庁施設を対象として、光が丘清掃工場の発電後の復水排熱を利用した高効率な熱製造と熱供給が行われています。この取組により、同様の施設を重油で賄った場合と比較して、二酸化炭素は66%減、NOxは72%減、SOxは94%減と大幅な環境負荷削減効果が得られています(東京熱供給株式会社の試算結果より)。
カ 自然再生の取組
埼玉県川越市所沢市狭山市三芳町にまたがる通称「くぬぎ山地区」では、都市化の進展や農業の衰退により、平地林の転用や荒廃が進んだことから、オオタカなどが生息する武蔵野の面影を残す貴重な平地林が失われています。

この平地林を未来の世代に継承することを目的として、平成16年に自然再生推進法に基づく「くぬぎ山地区自然再生協議会」が発足し、地権者、土地所有者、市民団体、関係行政機関等の多様な主体により同地区における特別緑地保全地区制度を活用した樹林地の保全・再生・活用のための検討が進められています。
http://www.pref.saitama.lg.jp/A09/BD00/kunugiyama/kyougikai/index.html
参考文献
(1) 古林英一著『環境経済論』日本経済評論社 2005年1月31日 p105-224.
(2) 寺西俊一・石弘光編集『環境保全と公共政策 岩波講座 環境経済・政策学(第4巻)』岩波書店 2004年2月16日 p123-148.
(3) 寺西俊一編集『新しい環境経済政策 サンテイナブル・エコノミーへの道』東洋経済新報社 2003年11月20日 p251-345.
(4) 環境省編集『環境白書(平成18年版)』ぎょうせい 2006年5月31日 
(5) 環境省編集『環境循環型社会白書(平成19年版)』ぎょうせい 2007年6月6日 

図引用参照
寺西俊一・石弘光編集『環境保全と公共政策 岩波講座 環境経済・政策学(第4巻)』岩波書店 2004年2月16日 図1DSDの費用負担の仕組み p139. 図2容器包装リサイクル法の仕組みp141.
古林英一著『環境経済論』日本経済評論社 2005年1月31日 p217.

引用ホームページ参照
環境教育・環境学習データーベース「エコ学習ライブラリー」
http://www.eeel.jp/ 最終アクセス2007.8.22

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