研究論文

地方財政確保のための効率化方法の一考察
財政破綻を防げ! 税収アップ大作戦―


One consideration of improvement of efficiency method for local finance guaranty

  • Prevent the public finance failure! Tax revenue rise large maneuvers -

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Present condition of local finance can force harsh public finance management with substantial revenue source insufficiency as still, more effort is required from substantial annual expenditure control and the collection ratio improvement of the rate which is directed to annual income guaranty. In this kind of circumstance, there is a circumstance which does not list the result whose measure of collection ratio improvement of rate is sufficient.  On the one hand, when “regulation reformation private opening propulsion 3 year plan (reform)” the Cabinet conference is decided in 2005 March in the country, should advance connection private opening at 36 businesses such as collection of rate policy was shown. Then, after rearranging collection system and the problematical point etc where I the market conversion test which is done in 2006 (government and private sector competitive bidding) stand on also the fact that the municipal corporation of part proposes the dunning business to the tax delinquent, relate to former rate, it is something which is examined concerning the introduction of the government and private sector cooperation which utilizes private special knowledge experience as a plan for collection ratio improvement of the tax in the municipal corporation.
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1 はじめに
 地方財政の現状は,大幅な財源不足により依然として厳しい財政運営を強いられ、大幅な歳出抑制と歳入確保に向けた地方税の徴収率向上に一層の努力が求められている。このような状況において、地方税の徴収率向上の対策が十分な成果を挙げていない状況にある。
 一方、国においては、平成17年3月に「規制改革・民間開放推進3カ年計画(改定)」が閣議決定され、地方税の徴収など36事業につて民間開放を進めるべきとの方針が示された。そこで、私は、平成18年度に行われる市場化テスト(官民競争入札)に一部の地方公共団体が税の滞納者への督促業務を提案したことも踏まえ、従来の地方税に係る徴収体制、問題点等を整理した上で、地方公共団体における税の徴収率向上のための方策として、民間の専門的な知識経験を生かした民間協働の導入について検討するものである。

課題と今後
・徴収業務の課題
・徴収業務に精通した職員の不足
・住民の納税意識の低下
・効率的かつ専門的な徴収体制の検討
・一部事務組合方式
・広域連合方式
・各地方公共団体における徴収状況
・今後の徴収体制のあり方
・現行の地方税徴収業務における民間委託
地方税徴収業務の民間活力の導入

第1章 地方税の徴収業務の現状分析
1 地方税の徴収状況
 地方税は、地方公共団体がその行政に要する一般経費を賄うために、その団体内の住民等から徴収する税である。

図1 地方税徴収率の推移
出典:総務省都道府県決算調・市町村決算調

2 徴収業務の課題
 徴収業務においては、納税者が納期限までに完納せず、督促を行なってもなお完納しない場合にとおられる滞納処分が最大の課題となっている。滞納処分の執行においては、地方税国税や私債権に劣後することや、また滞納者の中には、事業の失敗等のより所在が不明になることがあるため、現行の職員体制やノウハウだけでは限界がある。
 その課題は、1 徴収事務に精通した職員の不足?住民の納税意識の低下 2 区域外に住む滞納者への対応 3 税制度の複雑化 4 相談できる専門家の不足

2.1 徴収業務に精通した職員の不足
 徴税職員は、滞納者等の性格に沿って柔軟に対応し得る応接の技法とともに、地方税法国税徴収法をはじめ、民法、商法、破産法等の幅広い知識を身につけ、各自が創意工夫を凝らし、積極的に滞納整理事業の解決に取り組み、経験を積み重ねていくことが重要である。
 しかし、地方公共団体の税務職員は、国税職員のような専門家ではなく、また、定期的な人事異動のなかでは経験年数を積んで専門職員化することも困難な状況である。

2.2 住民の納税意識の低下
 長引く不況により所得も伸び悩む中、この課題を解決するためには、住民に納税意識を持たせることが非常に重要であり、現在、あらたな取組として税金の使途に住民の意思を生かしていこうとする使途選択納税制度が、一部の地方公共団体で始まっており、納税意識の涵養が図られるのではと期待されているところである。

2.3 その他〜税源移譲に伴う税収確保〜
 平成18年度の税制改正において、所得税の一部を個人住民税に移譲するため、個人住民税所得税の税率は5%、10%、13%の3段階から10%に一本化されることになる。これにより、課税総所得金額が200万円以下の税率を5%から10%へと引き上げ、逆に課税総所得金額が700万円超の税率を13%から10%へと引き上げ、結果としては、低所得者層の所得税の税額が下がり、個人住民税の税額が引き上げられることのなるため、滞納者がより一層増加することが懸念されている。
(単位:件)

図2 徴収事務を行う上での課題は何ですか(複数回答可)

                                       
第2章 効率的かつ専門的な徴収体制の検討
1 現在の徴収体制の見直しの動向
 地方税の徴収強化のために体制を見直している事例について比較、検討を行う。

1.1 一部事務組合方式
 一部事務組合は、複数の普通地方公共団体及び特別区がその事務の一部を共同処理するために、総務大臣、又は都道府県知事の許可を得て、設立することができるものである(地方自治法第284条第2項)。

1. 2 広域連合方式
 広域連合とは、普通地方公共団体及び特別区の事務で、「広域にわたり処理することが適当であると認めるもの」の管理・執行の広域的連絡調整を図り、かつ、これからの事務の一部を広域にわたり総合的・計画的に処理するための組合である(地方自治法第284条第3項)。

1.3 各地公共団体における徴収状況
 徴収率の長期低落傾向を受け、多くの団体が徴収率の向上と収入未済額の縮減のために、独自の思索を実施している。
・ 自動電話システムによる滞納者への納税指導、日曜日の納税窓口開設
・ 市町村連携による共同徴収や市町村への県職派遣
・ 税務署との連携や特別収納チームの編成・設置
・ 設定した収納目標の厳格な進捗管理

1.4 滞納整理システムの導入
〇きめ細やかな納税折衝の実現
 一言に「滞納者」と言っても、滞納者個々を取り巻く状況や滞納している理由は様々です。「滞納管理システム」では、滞納状況や折衝情報など、滞納者に関する生の情報を把握することができます。それにより、滞納者個々に適した折衝を計画し、きめ細やかなアプローチを行うことができます。
 また、分納管理機能ではガイダンスに従って納付要件を指定するだけで、即時に計画納付のシミュレーションや納税誓約書の出力ができます。約束の履行・不履行状況は窓口個人照会画面より確認ができますので、不履行者に対して早期に対策を講じることができます。

〇事務処理負担の大幅軽減
 滞納整理業務で必要となる、催告書の発行、各種調査書の発行、滞納処分に関する各種通知書の自動作成、豊富な条件による滞納者の抽出・一括処理、時効管理、不納欠損といった膨大な量の事務処理を、従来の業務の流れに沿った形でシステム化しました。ご担当者様が行う事務処理の省力化、量的拡大、精度の向上により、これまで事務処理に費やしていた時間が大幅に削減され、滞納者と直接折衝する時間をさらに確保することが可能となります。
 また、滞納者の進行管理と併せて、各ご担当者様の行動スケジュールや作業実績も管理ができますので、効率的な業務の遂行をサポートします。

〇ホストコンピュータを選びません
 「滞納管理システム」ではホストコンピュータで管理している住民記録情報や課税収納情報などを専用サーバに取り込み、滞納者情報を一元管理します。各種データを連携するホストコンピュータは、汎用機、オフコン、パソコンなど、機種を問わず、メーカーも限定していません。
 また、ホストコンピュータと別システム・別サーバで稼動するため、ホストコンピュータの稼働時間に関係なく使用することができます。  実際に滞納整理業務に携わったお客様の声をもとに、お客様とともに開発したシステムで、「現場の声」を大切にし、さらなる機能の強化を図っています。
 「滞納管理システム」を導入することにより、滞納整理事務が効率化され、催告と滞納処分の処理件数の増加に貢献します。それに伴い、納付件数が増加し、収納率の向上を図ることができます。

2 今後の徴収体制のあり方
2.1 現行の地方税徴収業務における民間委託
 平成17年4月1日、総務省は、地方税の徴収関連業務の民間委託す新に当たって、?納税者情報は特に慎重に保護を要する個人情報であり、民間事業者の活用を検討する場合には、個人情報保護に特段の配慮と慎重な取扱いが必要であること、?差押えや公売など公権力の行使に当たる徴収業務は、地方税法の規定により、徴税吏員に実施主体が限定されていることから、そのような公権力の行使を包括的に民間事業者に委託することはできないと都道府県に通知を行った。そして、公権力の行使(公売・差押え・催促・立入調査など)に関連する補助的な業務が現行の民間委託が可能であるとして例示を行った。

2.2 地方税徴収業務の民間活力の導入
 これは、債権回収などを業とする民間事業者に委託して、効率的な租税債権徴収を行うというものである。
 徴収業務を民間委託するメリットとしては、
・ 民間が有する債権回収のノウハウの活用により徴収能力の向上を図ることができる。
・ 職員の人件費削減により徴税コストの縮減を図ることができる。
・ 地縁的なつながりの排除により公平な税徴収が可能が考えられる。
等が考えられる。
 さらに、民間委託について「検討している」としている地方公共団体は、約6割の地方公共団体が、徴収業務における民間委託が今後、本格化していくものと思われる。
 しかし、現行法制度においては、総務省による市町村への通知にあるとおり、地方税の徴収関連業務の民間に委託推進に当たって、貢献権力の行使を包括的に民間業者に委 託することができないとしている。また、判例においても、全般的に地方税の徴収事務を行わせる旨の委託契約について違法であるという見解が示されている(函館地裁昭39.3.13)。
 一方、内閣総理大臣の諮問機関である「規制改革・民間解放推進会議」においては、民間開放を推進する立場から次の見解を示している。
「規制改革・民間開放の推進に関する第1次答申 平成16年12月24日(抄)」。
a 強制徴収権の行使の権限をいかなる主体に付与すべきかは立法政策上の問題であり、必ずしも公務員でなければならないものではない。
b 民間で、必要に応じ、法令や契約で担保することにより公平性・中立性を確保することは可能である。
c 徴収業務に際しては、現在公務員に課せられている守秘義務と同等の守秘義務を法令又は契約で課せばよい。
 以上、徴収業務の民間委託には賛否労論あり、現行法制度上は徴収事務の民間委託は難しいものの、徴収業務に対する信頼性が確保され、なおかつ民間委託によりちょうしゅうコストの削減効果が大きく見込まれる場合には法制度を改正し、徴収業務についても民間委託の導入を可能とすべきであると考える。

規制改革・民間開放推進3カ年計画(改定)(抄)(平成17年3月25日閣議決定
2 措置事項
13 流通・サービス業関係
 ウ その他
  地方自治体のコンビニエンスストア本部および店舗の立ち入り検査の弾力化(総務省
 地方自治体の徴収する地方税の収納委託を受けるコンビニエンスストアへの立ち入り検査については、予め検査方法等について双方合意のうえで定めておくなど、円滑なけんさの実施に努めるよう、各地方自治体に対し、周知する。
 この部分は、いわゆる「コンビニ納税」に関する地方団体の検査の実施方法についての通知である。
 地方税のコンビに収納は、平成15年度の制度改正(地方自治法施行令第158条の2の新設)によって実施できることとなったものであり、地方税の収納事務を適切かつ確実に遂行できる経済的・技術的基礎を有する者に対して、地方税の収納事務を委託できる仕組みである。(したがって、法令上、委託が可能とされる事業者は、いわゆる昆布にコンビニエンスストアに限られないが、実質的には、コンビニエンスストアへの委託例が多い。)
 これは、収納事務委託の手数料等として、地方団体にとっても一定のコストを伴うもの
であるが、住民の地方納付の便宜を図り、ひいては収納率の向上のもつながるものとして、効果が期待されている。
 この収納事務委託を行った場合には、地方団体は、受託者(コンビニエンスストア等)について、収納事務の状況を検査しなければならない(地方自治法第158条の2第3項)。平成15年度から可能となった仕組みであることから、検査を実施した経験のある地方団体はまだ少なく、今後、増加していくことが見込まれるが、新たな仕組みだけに、委託側・受託側双方にとって、この検査の実施方法について、十分なノウハウが蓄積されない状況にあった。
 このため、検査の円滑な実施に向けた取り組みを求める声が挙がり、規制改革・民間開放推進3カ年計画においても、上記のような方針が盛り込まれた。この通知は、これを受けたものであり、ポイントは、事前に良く両当事者で相談すること等により、円滑な検査を図って欲しいというものである。
1 地方税の徴収に係る非常勤職員等の活用
 近年、各地方団体において、地方税の徴収に関して非常勤職員の活用が進められているが、非常勤職員が担当することが可能な業務の範囲や、非常勤職員が担当することが可能な業務の範囲や、非常勤職員を徴税吏員に任命することの可否については、以下のとおりであるので、非常勤職員等の活用によって徴税コストの低減や徴収率の向上を図る。
(1) 非常勤職員(特別職の非常勤嘱託職員)が相当することが可能な業務の範囲
地方税の徴収に関する業務のうち、公権力の行使(地方税法によって徴税吏員が行うこととされているもの)に当たらない業務や、徴税吏員が行う公権力の行使に関連する補助的な業務については、非常勤職員であっても、担当することが可能と考えられる。
具体的には、督促状の名義人になることや、自らの判断で自分の名において立入調査や差押えを行うことなどはできないが、ア)滞納者への電話や滞納者宅への訪問を通じて自主的な納税を呼びかけることや、それに応じて納税される場合に該当金銭を収納すること(ただし、金銭の収納については、別途、その非常勤職員を会計職員に任命しておくことが必要。)、イ)徴税吏員の指示に従って、督促状の作成・発送作業を行うことや徴税吏員が実施する差押え等に同行して補助的な作業に従事すること、などについては、非常勤職員も担当し得るものである。
(2) 非常勤職員(特別職の非常勤嘱託職員)を徴税吏員に任命することの可否
 特別職の非常勤嘱託職員は、特別職であるため、罰則で担保された守秘義務や厳格な服務規律が適用されない。このため、強力な公権力の行使を担当し、納税者の秘密情報にも深く関わる徴税吏員の業務を担当させることは適当でないことから、徴税吏員への任命はできないものである(なお、一般職の非常勤職員についても、本格的業務を行うことができない職員であると解されていることから、徴税吏員に任命することはできない。)。
 このため、これまでは、当該地方団体に勤務していた退職者を、再任用職員や短期間勤務職員として採用(地方公務員法第28条の4及び第28条の5)し、併せて徴税吏員に任命する方法以外は「週3日」等の短い勤務時間で勤務する職員を徴税吏員に任命することはできない仕組みとなっていた。
 これに対し、平成16年6月に「地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律」が改正(平成16年8月施行)され、当該地方団体の退職者以外の者からも、本格的業務に従事することができる短時間勤務職員を、任期を定めて採用することができる制度が創設された。
 上述のように、特別職の非常勤嘱託職員(及び一般職員の非常勤職員)を徴税吏員に任命することはできないが、この任期付短時間勤務職員制度を活用すれば、当該地方団体の退職者に限らず、幅広い候補者の中から、適任者を「週3日」等の勤務形態の短時間勤務職員として採用し、併せて徴税吏員に任命することが可能となっているので、そのようなニーズがある地方団体においては、この制度の活用を図っている。
 この部分は、地方税の徴収について、非常勤職員等を活用することについての通知である。
 非常勤職員の活用についても、民間委託と同様に、公権力の行使に当たらない業務や、公権力の行使に係る補助的な業務については、可能である。地方税の徴収は、全ての業務が、正規職員である徴税吏員に限定されていると誤解されているケースもあるが、かなり幅広い業務について、非常勤職員の活用は検討可能である。
 また、非常勤職員は、あくまで当該地方団体の職員であるので、上司である徴税吏員の指揮命令に服することとなり、また、地方団体に勤務する公務員として当該業務に従事することとなるので、民間事業者への委託に比べて、秘密の保持等の関係で活用しやすい場合も想定される。(このため、非常勤職員の活用を思い立つ地方団体は、相当数に上るようであるが、中には、地方税法の解釈として、地方税の徴収については、補助的な業務も含めて、全てにおいて非常勤職員は活用できず、正規職員しか使ってはならない仕組みになっていると思い込んでいる例もあると聞いている。今回の通知は、そういう誤解の解消を図ることも目的の一つとなっている。)
 非常勤職員の場合、地方税の徴収に関する一定の業務を担当すると同時に、会計職員にも併せて任命すれば、公金の収納もできることとなるので、「戸別訪問による自主納税の呼びかけ」を行い、かつ、「説得に応じた滞納者から現金を収納して帰庁すること」も可能である。実際、こうした形で非常勤職員を活用している地方団体もある。
 非常勤職員については、もう一つ、非常勤職員を徴税吏員に任命し、差押え、公売等を実施させることが可能か、という問題がある。この点は、小規模な市町村等において、徴税吏員の適任者が庁内に見当たらず、都道府県の税務職員のOBや、国税のOBなどから適任者を選びたいといったケースなどに想定されるニーズである。
 この問題については、通知本文に書かれているとおりであるが、この問題を考える際には、一口に「非常勤職員」と言っても、一般職の非常勤職員と特別職の非常勤職員が存在すること(多くの地方団体にとって、徴税吏員の権限との関係が知りたい「非常勤職員」と言えば、特別職の非常勤職員(非常勤嘱託職員)であろう。)を理解することが重要である。
 また、正確に言えば「短時間勤務職員」(勤務時間は短いが、本格的な業務が実施できる一般職の職員)に当たる職員も含めて、「非常勤職員のように短い勤務時間で働いてもらう職員」のうちどのようなものが、地方税の強制徴収権限の実施主体として活用可能か、という点について、この通知では述べられている。
 この通知では、結論としては、特別職の非常勤嘱託職員(及び一般職の非常勤職員)を徴税吏員に任命することはできないが、任期付き短時間勤務職員については、徴税吏員に任免することができるため、週2日・週3日といった短い勤務時間で働く徴税吏員を置きたいのであれば、この任期付き短時間勤務職員の制度を活用する。
4 地方税の徴収率の向上と住民への公表等
 三位一体の改革における税源移譲の進展や税負担の公平確保の必要性の高まりに応じて、地方税の徴収率の向上や滞納・脱税の解消は、ますます重要性を増してきている。
 平成17年3月29日に総務省において策定した「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針」においても、こうした観点から地方税の徴収率の一層の向上に取り組むべきことが示されるとともに、行政改革の成果について、他団体と比較可能な指標について公表するなど、住民等にわかりやすく公表することに努める。
 そこで、各地方団体におかれては、地方税の徴収率の向上対策に一層積極的に取り組むとともに、取組内容やその成果をわかりやすく公表するよう努めていきたい。
 また、徴収状況に関連するデータの公表に関しては、徴収の実態をできる限り正確に住民等に理解してもらえるように工夫することが望ましいと考えられることから、例えば、時効によって消滅した税債権の金額や、いわゆる不納欠損処理を行った税債権の金額などを従来のデータと併せて公表すること、現年課税分と滞納繰越分の徴収状況を区分して明示すること、等に取り組んでいただきたい。さらに、課税年度ごとに収納状況を追跡して、各課税年度ごとの最終的な徴収率を把握し、そのデータを公表すること、についてもご検討する。
 この部分は、地方税の徴収率向上に向けた取り組みの重要性と、住民へのわかりやすい公表について通知した。
 平成17年3月29日に総務省が策定・公表した「新地方行革指針」においても、地方税の徴収率の向上が指摘され、併せて、行革の成果を他団体と比較可能な指標で公表することなどが求められている。こうした状況を踏まえ、この通知では、徴収率向上への取り組みと住民への公表について述べられている。
 ところで、これまで、地方税の徴収率については、現年分が98%程度、滞納繰越分が20%程度となっており、両者の合計では、93%程度というデータが用いられてきた(いずれも全国合計値)。このデータ自体は、収入額/調定額という数値であり、当該年度において収入すべき(収入対象となる)金額のうち、実際に当該年度中に収入が実現した金額を公表している。このデータは、その意味で正しいものであり、また、有用な指標であるが、これを地方税の「徴収率」として用いてきたため、地方税は、最終的に、課税された金額100のうち、93しか収納されないで終わっているという誤解を生んでいる面も否定できない。「地方税は100人中93人しかはらっておらず、7人が払わないままになっている。」という誤解にもつながるおそれがある。
 現在の「徴収率」の場合は、小規模な団体において、大型リゾート施設が倒産して固定資産税が滞納になった場合などにおいては、滞納繰越分が年々累積して分母を拡大してしまうため、極端に低い「徴収率」が出現したりする。また、滞納繰越分について、ねばり強く徴収努力を続けるよりも、早期に「徴収不能」と認定して、いわゆる「不納欠損処理」をしてしまえば、数値が良くなるという面もある。
 一般的に、「徴収率」、しかも、「現年分のみでなく、滞納繰越分も含めた徴収率」と言えば、ある年度に課税した金額が、課税年度及びその後数年間をかけて、最終的にどれだけ収入されているか、ということを思い浮かべる人が多いのではないだろうか。その意味では、地方税の徴収率は、本当は、99%を超えている。現時点では、推計によらざるを得ないが、現年(課税年度)において、まず、98%が収入され、滞納となった2%部分も、その後数年を経て、その6割程度が収納されており、最終的な徴収成績は、概ね99.2〜99.3%程度になっているはずである。
 このように、実際には、99.3%程度の徴収実績がありながら、現在の「徴収率」の計算方法では、93%というデータが出る。
 こうした統計上あり方を正確に理解したうえで、各地方団体の徴収の実態をできるだけわかりやすく、正確に住民に公表していくことが重要である。
 そのため、この通知で指摘されているように、まずは、従前からの「徴収率」については、現年分と滞納繰越分とを区分して説明するようにすべきであろう。また、さらに、当該年度中に「不納欠損処理」として、どれだけの地方税債権が消滅したか、というデータについて、その内訳を含めて住民に公表することが望ましい。これは、地方税が徴収できないままに消えている内容を示すことであり、本来の意味での「徴収率」の向上は、こうした地方税債権の消滅をいかにして防ぐかという取り組みであると言える。その内訳まで把握・公表することとすれば、当該地方団体の租税債権が、消滅時効を迎えることでどの程度消えているのかが分かるし、また、執行停止手続きのうえで、不納欠損処理されている金額等がわかれば、滞納者の無資力化等をどの程度確認しながら債権管理をしているかを知る手がかりにもなり得る。
 そして、「徴収率」の把握という観点からは、各年度の課税額について、その後の収納状況を課税年度分ごとに追跡して、最終的にどの程度の割合が収入に至ったのかを把握し、公表することも有益であろう。全国データについては、現状の決算統計資料からは、各年度の課税額についての追跡ができないため、上述のような推計によらざるを得ない状況であるが、各地方団体においては、可能であれば実額の追跡によって、(困難な場合でも推計等によって、)こうした「最終的な徴収率」がどのような状況にあるのか、把握に努めていただきたいと考えている。
 これまで使ってきた「徴収率」についても、滞納発生率の抑制や滞納の発生から収納までの時間の短縮が率の改善につながるデータとして、今後とも、有効に活用すべきと考えるが、一方で、最終的な徴収率が99%を超えており、地方税は、そのほぼ全額が収納されているという事実についても、正確な実情の把握と公表が必要になってきている。

・滞納者に対する電話での自主納付の呼び掛け
コンビニエンスストアによる収納業務
・インターネットオークションによる入札関係業務
・不動産公売情報の配布・広報宣伝業務など、
・民間委託できる業務を例示した。

第3章 政策提言

提言1 徴収業務における民間開放
 これまでの論点を踏まえ、滞納となった地方税の確実で効率的な徴収業務を行う体制づくりを目指し、公権力の行使に当たる業務についても民間委託を可能とする制度設計を提言する。
 まず、滞納者の行動を表1滞納者行動の3パターンに分類し、その分類に応じて効果的な民間委託を進めることとした。

表1 滞納者の行動
分  類 効果的な民間開放策
1 不完全滞納者                   税金が課税されていることを知らなかった人や病気・身体障害などのために納税することができなかった人 ・納税意思があるので、滞納を防止するため電話での催告や相談を積極的に進め、納税の履行を促すことが必要              ⇒電話による催告、相談業務についての民間活力の導入が有効
2 利己的滞納者                           税金が課税されることについて、損得勘定を計算し滞納処分を可否仕様とする人 ・法的に滞納処分が執行可能になった時点で即時に差押えを行い。強力に滞納整理を進めることが有効       
・地縁的なつながりの弊害を排除し、高度で専門的な知識経験者の確保が必要                  ⇒滞納処分業務についての民間活力の導入が有効
3 確信的滞納者           滞納ないし滞納処分の違法性・不当性の確信に基づき、納税に抵抗し、反抗して、公然と滞納を繰り返す人

提言2 徴収業務における民間委託手法の構築
 徴収業務を民間委託するに当たり、滞納地方税の納税促進の効率的かつ効果的な手法として、催告業務についてはコールセンターへ、滞納処分業務については債権回収業務のノウハウを有する地方税徴収受託者(制度創設)へ民間委託する(図3 徴収業務における民間委託のイメージ図)。




図3 徴収業務における民間委託のイメージ図

2.1催告業務におけるコールセンターへの民間委託
 滞納処分に至るまで、滞納者に電話による催告や納税相談を行っており、これらの電話対応等に多くの時間を費やしている現状がある。すでに地地方公共団体においては、自動電話催告システムの導入や非常勤職員による嘱託制度を活用して対応しているが、これらは、機械的催告や非常勤職員の補助的な業務にとどまっており、滞納者に応じた納税の催告には十分な効果が期待できないものである。このため、滞納者の納税相談も含めた催告業務を包括的に民間委託する。

2.2滞納処分業務における地方税徴収受託者への民間委託
 地方税の徴収業務については、債権関係が複雑化した事案や過去からの累積事業で困難を極めていることから、債権回収に関して高度な専門知識と経験を有する民間事業者のノウハウを活用すべく、滞納処分業務を包括的に民間委託する。

提言3 徴収業務における民間委託にあたっての法令整備
 徴収業務の民間委託を行うに当たり、個人情報の流出や自力執行権の行使による権力濫用が懸念される中、徴税吏員には多くの法的義務や種々の権限があたえられていることを踏まえ、守秘義務の徹底や権力濫用の防止に十分に配慮した法令改正や条例の制定を提言するものである。これにより、地方公務員に求められている公平性、中立性の確保や守秘義務についても、法律、条例により厳格な行為規制を民間事業者に課すことができれば、法的に担保することが可能であると考えるものである。

3.1地方自治法施行令の一部改正
 地方自治法施行令第158条の3の規定を設け、民間事業者のうち経理的及び技術的な基礎を有する一定の者であれば、地方税の徴収業務を当該事業者に委託できることとし、当該受託者を「地方税徴収受託者」と規定する。

3.2地方税法の一部改正
 地方税法に「地方税徴収受託者」及び「みなし徴税吏員」の規定を設ける。このうち、みなし徴税吏員は、地方税徴収受託者の代表者又は代理人、使用人その他の従業者のうち、地方税の徴収の事務に従事する者とし、徴税吏員と同様の権限を付与する。

3.3地方税の徴収業務における委託に関する条例の制定
 地方税法3条の規定の地方税の賦課徴収に関する規定により、地方公共団体において、地方税の徴収業務における民間委託に関する条例を制定し、みなし徴税吏員を管理監督する地方税徴収業務受託者への立入検査及び委託業務違反に対する地方公共団体の立入検査、勧告、罰則や業務取消しについて規定する。

第4章 地方税財政改革の推進
4.1 財政情報の開示
 地方行革を断行するには、その前提として、地方公共団体の財政状況について住民に対する徹底した情報開示が必要である。

4.2 地方税財政制度改革の原点
  法律で決まる地方の仕事と税財源、それではなぜ、財源移転がこれほどまでに大きくなっているのだろうか。地方が実施している仕事とその財源調達の仕組みにある。まず、自治体が行う事務事業は?国庫補助の対象となる「補助事業」と、?対象とならない「単独事業」とに区分される。
  また、「税源の移譲ではなく課税自主権によって地方は財源を賄うべき」という主張がありますが、これは、自治体の仕事が完全に自治体の裁量にゆだねられている社会を前提とした主張です。地方財政支出の多くが国の義務付けの下にある社会では、超過課税や法定外税は限界的な部分において一定の役割を果たすとしても、それはあくまでも補完的にならざるを得ません。


図4 法律で決まる地方の仕事と財源構成
出典:『新・地方分権の経済学』林宜嗣著、日本評論者、2006年5月13日、32頁。

表2決算状況


(出典):総務省都道府県決算状況―16年度

表3 決算状況


(出典)総務省都道府県決算状況―16年度

4.3 滞納整理の問題点
 税収入の確保の問題
 税の確保をするには、極力滞納処分を積極に行うと共に差し押さえが可能なところは、差し押さえを前提に交渉を進めることが大事であるが、差し押さえは換価を目的としており、あくまでも手段であり、交渉は継続して行う必要がある。また、交渉の内容によっては、解除もやむを得ない場合もある。
 不動産を差し押さえるときは、直前に登記簿謄本を必ず取り寄せ、再確認をする。
 預貯金の差し押さえについては、過去の出し入れ等、十分調査をした上で、差し押さえを執行する。
 滞納整理の判断は、早い時期に見極め、適切な整理を行う必要がある。

4.4 滞納徴収の公平性
適正に課税された租税を的確に徴収するには、徴収職員に課せられた使命であり、そのことによってはじめて租税負担の公平性が実現される。
 近年、長引く経済不況等の影響により滞納の件数と税額が累積してきている。滞納整理に従事する職員にとっては、これを取り戻すために大変苦慮している。滞納者が納税を拒否する理由は、家庭内の経済事情のため納めたくても納められない場合や、税に対する拒否反応をはじめ行政に対する不満等があげられる。
 我々市職員は、滞納者が抱えているこれらの問題について相談に応じたり、説得等に当たるとともに必要な場合は速やかに滞納処分をし、税を徴収しなくてはならない使命がある。

4.5 コンビニ収納の開始
1. 収納事務の私人委託について
 地方自治法施行令の改正により、地方税の収納事務についても私人委託・コンビニ収納が可能となりました。24時間営業で年中無休の店舗が多いコンビニエンスストアで税金が納付できるようになれば、納税者の利便を向上させるとともに収納率の向上の観点からも有益だと考えられる。
 すでに、水道料金については、一部の自治体でコンビニ収納が実施され、一定の効果もあるようであるが、税のついては法改正がされたばかりで全国的にも導入の検討が始められているところである。
2.地方税のコンビニ収納を実施するに当たっての留意点
(ア) 取扱期間等の調整
1 各税にはそれぞれ納期限が定められており、納期限を過ぎると督促手数料や延滞金が加算される場合がありますが、督促手数料や延滞金をコンビニ店頭で徴収させるのか、納期限内の取り扱いにするのか整理する必要がある。
2 ⇒納期限の取り扱いについて、コンビニ店頭でのトラブルを避けるため取扱期間は、納期限内納付に限定し、納期限までとする。
3 市県民税・固定資産税には全期前納があり、前納報奨金も取り扱えるように調整する必要がある。今後考えられるのが、前納報奨金を廃止するか考えもある。
4 コンビニ収納には、バーコード付の納付書が必要となる。
5 取り扱い金額について
6 コンビニのバーコードシステムでは、金額欄が6桁までしか無いので、100万円を越す税は取り扱いができない。
7 ⇒100万円を超える税については、コンビニでは支払えない旨を納付書に明示する必要がある。
軽自動車税の取り扱いについて
軽自動車税には、車検に必要な継続検査用の納税照明欄に領収印を押す必要が有するものがあるが、コンビニ店頭でも取り扱えるよう調整する必要がある。
(イ) 個人情報の保護について
市県民税や固定資産税は税額から個人の所得や資産が類推し易いが、コンビニ収納では、税の納付済通知書がコンビニ本部の保管となり、守秘義務を確保し、個人情報を保護するため契約書に守秘義務の規定を設けることが必要である。
(ウ) 出納閉鎖期間について
コンビニ収納では、店頭で納付してから実際に市の口座に現金が振り込まれるまで最長で15日かかるため、出納閉鎖日(5月31日)には、20日前後までの税しか公金扱いされず、6月1日以降に振り込まれるため滞納扱いとなる。
(エ) コストについて
システム導入に伴う費用については、コンビニ収納では、取り扱い手数料は1件当たり60〜70円が見込まれる。

〇コンビニ収納にすれば効果的
愛知県が10月、自動車税の滞納処分の一部について、コンビニエンスストアでの収納を初めて実施したところ、納税件数・金額とも前年同期に比べて3割以上増えたことが、県税務課のまとめで分かった。同課は「夜間、土日も納付できるようになった効果は大きかった」と分析。来年度からの全面実施に自信を深めている。
 滞納者に対し10月21日、バーコードが付いた催告用の納付書を発送。同末までに2万件余り、金額にして約7億4300万円が納税された。このうちコンビニ利用が件数、金額とも全体の6割を占めた。コンビニが利用された時間帯を見ると、土日、夜間など従来の金融機関の窓口営業時間外が全体の4割だった。
4.3 財務に関する制度の見直し
 財務に関する制度については、地方公共団体も経済活動の一主体であることを踏まえ、社会情勢の変遷や情報通信技術等の進展に応じた適切な見直しが必要である。とりわけ。クレジットカードによる使用料等の公金の支払いを可能とすること。
1 総務省が平成18年3月13日に、クレジットカードによる使用料等の公金の支払いを可能とすること。
2 地方税は、もとより、地方税法第20条の6第1項(第三者の納付又は納入及びその代位)の規定により、クレジットカードを使って納付することは可能である。

おわりに今後の課題
 地方税の徴収業務における民間業者への委託導入により期待される効果については、地方公共団体、納税者、民間事業者のすべてに効果が波及していくことが考えられる。まず、地方公共団体にとっては、民間事業者の活用により、徴収業務に精通した職員の不足を補うことができ、機動的な滞納処分がなされるなど、地方税の徴収率が向上する。また、納税者にとっては、より厳正な徴収がなされることで税に対する不公平感が是正され、納税意識が向上していく。さらに、民間事業者にとっては、民間が有するノウハウなどの専門性を活用した市場が創出され、地域の雇用が創出される。
 さらに、これらの効果から、地方公共団体における自主財源が確保されることにより、地方分権をさらに推進していくことが期待できる。

地方公共団体にとっては、民間事業者の活用により、徴収業務に精通した職員の不足を補うこと
・機動的な滞納処分がなされるなど、地方税の徴収率が向上する
・納税者にとっては、より厳正な徴収がなされることで税に対する不公平感が是正され、納税意識が向上していく

参考文献
(1)『規制改革・民間開放推進3か年計画(改定)』、平成17年3月25日閣議決定
(2)『規制改革・民間開放の推進に関する第1次答申』、平成16年12月24日、24頁。
(3)『地方の自主性・自律性の拡大及び地方議会のあり方に関する答申について』、平成17年12月9日、8-9頁。
(4)『地方税財政改革の推進に関する意見』、平成17年6月10日、9頁。
(5)『新・地方分権の経済学』林宜嗣著、日本評論者、平成18年5月13日、32頁。
図1 地方税徴収率の推移
出典:総務省都道府県決算調・市町村決算調-16年度
図2 徴収事務を行う上での課題は何ですか(複数回答可)
図3 徴収業務における民間委託のイメージ図
図4 法律で決まる地方の仕事と財源構成
出典:『新・地方分権の経済学』林宜嗣著、日本評論者、平成18年5月13日、32頁。
表1 滞納者の行動
表2 決算状況
出典:総務省都道府県決算調・市町村決算調-16年度
表3 決算状況
出典:総務省都道府県決算調・市町村決算調-16年度