レポート

国際メディア論特講
 IT革命の進展がもたらす人間関係・ビジネス・社会・文明などの変化について予測し、それを叙述せよ。

はじめに
 過去と未来を探訪している。第1のグループに属するもの中核をなすものは、知識社会の重要性と、そこから生じる(コミュケーションや技術の)諸問題について論ずる。第2のグループに属する論文は、イデオロギーと、将来起こりうる文明の衝撃について考察する。そして第3のグループは、世界の主要な国々と地域を取り上げ、ヨーロッパの未来、イスラム原理主義の台頭、アジアとヨーロッパの新しい地理的パターン、そして21世紀は太平洋の世紀となるかどうかを分析する。
 予測には常に危険がつきまとう。といいのも、適切に論じることができるのは「構造的な変化」にすぎないからである。

1 情報と技術
 21世紀も終わりに近づいた今日、われわれが「情報化時代」に入ろうとしているのは明らかである。情報化時代は、従来のさまざまなコミュニケーション形態の単なる延長線上にあるのではない。それは社会や技術の構造にかかわる新しい「原則」のことであり、この200年来、社会を変貌させてきた大変革にも匹敵するものである。そのような変化は、産業革命と機械技術の発展をもたらし、人類が自然を管理する――そしてある意味では自然を脅かす――大きな力を与えてきた。しかしそれはまた、空間と時間に対する新しい概念を生み出し、遠く離れた世界の国々や国民を新たに緊密に結びつけ、あるいはときとして対立させる形で、一つに統合してきたものでもあった。
 ところで、「情報化時代」とは、いったい何なのだろうか。われわれはいまその戸口に立ったばかりなので、過去の経験に照らしてみても、科学者や企業家が新しい用途や変化を発見するにしたがって、どのような応用や成果が生まれるかを完全に予測または想像することはできない。しかし、まず、情報化時代を決定づける特徴と、その根底にある原則を考えることは可能である。
 人間社会の歴史において社会的交流の性格を決定する要素、すなわちコミュニケーションに関して四つの明解な革命――話し言葉(音声言語)、文字、印刷、そして現在のテレコミニュケーション(電気通信)があった。それぞれは、技術に基づいたと特有の生活様式に結びついている。
 われわれは今日、「第三の技術革命」とも呼ぶべき登り坂の途上にある。登り坂というのは、すでに発明・技術革新の段階から伝藩・拡散の段階へとさしかかっているからである。拡散の度合いは、地球上にあるそれぞれの社会ごとに、その経済的な条件や政治的安定などによって違いがある。しかしもはや、この坂道を逆方向に戻ることはできない。かつての西洋世界、そしていまや工業化の進展につれて地球上の他のすべての地域は、第1、第2の技術革命によって大きく変貌を遂げてきた。第3の革命の結果として起こるさまざまな変化は、もっと激しいものであるかもしれない。

2 現代と未来
 西暦2000年が間近に迫った現在「21世紀は太平洋の時代」という期待が広まっている。ヨーロッパ中心の文明が、約2000年(哲学、宗教、科学をその核とする)、そして欧米による政治・経済支配が500年を経ているが、いま、世界の中心および新たな潮流は、地中海から大西洋を経て、いよいよ太平洋に移るのだろうか。
 文化について考える場合、二つの次元がある。一つは、その国国有の「精神性あるいは価値観」で、これは通常、宗教という形をとり、他の文化から識別する特徴となる。もう一つは、美術・文学作品や社会のスタイルという形で表現される産物であり、その国の創造的貢献度が、これによって判断できる。
 文化のもう一つの次元は、芸術面での創造性である。歴史をひもとけば、国家が世界のひのき舞台に躍り出るとき、創造性も大きく開花する。普通は、いわゆるハイカルチャーの分野においてである。その顕著な実例が日本だ。第二次世界大戦後、日本文化は欧米に対して非常に大きな影響を与えた。

まとめ
 IT革命の進展がもたらす人間関係・ビジネス・社会・文明などの変化については、今後も進化するものである。さらに、ダニエル・ベルの精力的な思索は、いまもとどまるところを知らない。こんな知識にいみを与える想像力豊かな知識人が、21世紀にも続いて現れるための知的社会の構造についてなのである。または「情報化」社会と呼ばれている革命的な現象も、じつはこの精神的準備があればこそ可能になったものであって、たんに個々の技術革新の積み重ねでできたものではなかった。といえるのではないか。

参考文献
(ダニエル・ベル著『知識社会の衝撃』TBSブリタニカ、1995年9月、10頁・13頁・44頁・86頁・318頁・326頁・327頁)
知識社会の衝撃
http://blog.tsutaya.co.jp/battery